2007'03.15.Thu
中学生一護×院長竜弦 第7弾
一護くんの進学相談。
想いはいつだって届かなくて。
---+---+---+---+---+---+---+---
あなたの唇はいつだってやさしいのに
あなたの言葉はいつも俺に厳しくて
一護くんの進学相談。
想いはいつだって届かなくて。
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あなたの唇はいつだってやさしいのに
あなたの言葉はいつも俺に厳しくて
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一護は、わざと音を立ててキスをする。
彼が嫌がるのをわかりながら――いや、わかっているからこそ、だ。
そして、そのとき一瞬だけ寄せられる眉を決して見逃しはしない。
この人が一護のためにわずかばかりでも心を動かしている、それを感じることができるから。
「あんたはさ、どんな高校行ってたんだよ」
離した唇そのままに声を出すと、まるで声は囁きのようになった。
「……今の空座第一高校とさほど変わらないところだ」
返す彼の言葉もまた、一護の唇をくすぐっては消えていく。
「公立?」
やっぱり離れがたくて、一護はもう片手を彼の肩に添えた。真正面に固定するようにして、彼の次の言葉を待つ。
「少なくとも私にとっては、私立に行くにはデメリットの方が大きかった」
目を伏せる彼が見ているのは、一護の胸元あたりだろうか。なんにせよ彼が視界に入れてくれる、そのことが一護を嬉しくさせるのは疑いようがないものだった。
「高校選びに重きを置くことはないだろう」
「へぇ?」
「偏差値はただ結果にすぎない」
思ったより真っ当な正論を吐かれて一護は目を丸くした。
なんとなく、子どもだと切り捨てられるか流されるか、もしくは突き放されのではないかと思っていたから。
キスをする。
いつからか鍵をかけた院長室の中で交わされるそれを、一護は彼の一護への気持ちの証明とは考えていない。
彼と一護との間にはいつだって越えようのない壁があって溝があって、一護は見えないそれの前で足踏みすることしかできないのだ。
「俺、やっぱここにいたい」
「なぜ?」
首を傾げるその人は、一護の気持ちに気づきながら、気づかないふりをしている。
いや、もしかしたら、本当のところはわかっていないのかもしれない。最初から子どもの戯れ言だと思われていたとしたら、さすがに少し泣きたくなるけど。
顔を伏せ、彼の肩に額を当てる。
こんなに近くにいても、それでも思うんだ。
「あんたのとこがいいよ」
――あなたの傍にいたい。
届いてはいけない言葉だと知っている。ゆえに届かない言葉だともわかりきっていて。
だからこそ、一護はあえてそれを口にするのだけれど。
「君は、医者になるのだろう」
子どもの独りよがりな感傷だ、と聴こえた。
本気で医者になりたいならばくだらない感情で選り好みするな、とも聴こえた。
本気だからこそだなんて、そんなことを伝えても一笑に付せられることは不思議と容易に想像できた。
「その非常識な思考は今のうちに改めておくんだな」
いつからか感じた小さな棘は、今では疑問に思うこともなく一護の傍らにあった。
けれど、それを伝える勇気は今の一護にはなくて。
――あんた最近、俺にきつくなったね。
「……あんた、自分こそ非常識な色気振りまいてるってわかってんの?」
云いたい言葉とはわずかにズレた、しかしそれも確かな本音だ。
「ふざけたことを」
吐き捨てるように呟かれた言葉は刃のように一護を抉る。
それは一護が彼に想いを告げ始めてから明確なものとなっていった。
まるで、一歩踏み出そうとする一護を拒絶するかのように。
「本気だって云っても……、信じてくれないよな」
――本気で好きだなんて、
「無論だ」
寄せた唇は、決して避けられることはない。
それなのにこの人は一護を、一護の言葉を、信じようとはしてくれなくて。
永遠を求めているわけじゃない。
いつ終わるとも知れない想いがあって、それがただこの人に向かっている、それだけのこと。
確かにここにいるのにどうしたって手の届かないのが一護の想い人だ。
この愛しいわからずやに、今の想いくらいは届けばいいと願いながら、一護は彼にもう一度キスをした。
一護は、わざと音を立ててキスをする。
彼が嫌がるのをわかりながら――いや、わかっているからこそ、だ。
そして、そのとき一瞬だけ寄せられる眉を決して見逃しはしない。
この人が一護のためにわずかばかりでも心を動かしている、それを感じることができるから。
「あんたはさ、どんな高校行ってたんだよ」
離した唇そのままに声を出すと、まるで声は囁きのようになった。
「……今の空座第一高校とさほど変わらないところだ」
返す彼の言葉もまた、一護の唇をくすぐっては消えていく。
「公立?」
やっぱり離れがたくて、一護はもう片手を彼の肩に添えた。真正面に固定するようにして、彼の次の言葉を待つ。
「少なくとも私にとっては、私立に行くにはデメリットの方が大きかった」
目を伏せる彼が見ているのは、一護の胸元あたりだろうか。なんにせよ彼が視界に入れてくれる、そのことが一護を嬉しくさせるのは疑いようがないものだった。
「高校選びに重きを置くことはないだろう」
「へぇ?」
「偏差値はただ結果にすぎない」
思ったより真っ当な正論を吐かれて一護は目を丸くした。
なんとなく、子どもだと切り捨てられるか流されるか、もしくは突き放されのではないかと思っていたから。
キスをする。
いつからか鍵をかけた院長室の中で交わされるそれを、一護は彼の一護への気持ちの証明とは考えていない。
彼と一護との間にはいつだって越えようのない壁があって溝があって、一護は見えないそれの前で足踏みすることしかできないのだ。
「俺、やっぱここにいたい」
「なぜ?」
首を傾げるその人は、一護の気持ちに気づきながら、気づかないふりをしている。
いや、もしかしたら、本当のところはわかっていないのかもしれない。最初から子どもの戯れ言だと思われていたとしたら、さすがに少し泣きたくなるけど。
顔を伏せ、彼の肩に額を当てる。
こんなに近くにいても、それでも思うんだ。
「あんたのとこがいいよ」
――あなたの傍にいたい。
届いてはいけない言葉だと知っている。ゆえに届かない言葉だともわかりきっていて。
だからこそ、一護はあえてそれを口にするのだけれど。
「君は、医者になるのだろう」
子どもの独りよがりな感傷だ、と聴こえた。
本気で医者になりたいならばくだらない感情で選り好みするな、とも聴こえた。
本気だからこそだなんて、そんなことを伝えても一笑に付せられることは不思議と容易に想像できた。
「その非常識な思考は今のうちに改めておくんだな」
いつからか感じた小さな棘は、今では疑問に思うこともなく一護の傍らにあった。
けれど、それを伝える勇気は今の一護にはなくて。
――あんた最近、俺にきつくなったね。
「……あんた、自分こそ非常識な色気振りまいてるってわかってんの?」
云いたい言葉とはわずかにズレた、しかしそれも確かな本音だ。
「ふざけたことを」
吐き捨てるように呟かれた言葉は刃のように一護を抉る。
それは一護が彼に想いを告げ始めてから明確なものとなっていった。
まるで、一歩踏み出そうとする一護を拒絶するかのように。
「本気だって云っても……、信じてくれないよな」
――本気で好きだなんて、
「無論だ」
寄せた唇は、決して避けられることはない。
それなのにこの人は一護を、一護の言葉を、信じようとはしてくれなくて。
永遠を求めているわけじゃない。
いつ終わるとも知れない想いがあって、それがただこの人に向かっている、それだけのこと。
確かにここにいるのにどうしたって手の届かないのが一護の想い人だ。
この愛しいわからずやに、今の想いくらいは届けばいいと願いながら、一護は彼にもう一度キスをした。
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