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約束のときを、きみと

2024'11.24.Sun
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2006'12.27.Wed
「避難なんて……意味ないと、思うけど」
 続けてなにか云いたげに口を開いた雨竜は、しかしすぐに視線をそらして俯いてしまう。
「そんな顔するなよ。戦争なんて起こらないって」
 つとめて明るく云って雨竜の頭をがしがしと撫でる一護を、上目遣いに見て雨竜は呟いた。
「……一護もすぐ、プラントに来るんだろ?」
「うん……多分」
 本当は、わからなかった。
 一護にはまだ小さい妹たちがいたし、雨竜には黙っていたけれど一護の父親は地球軍の軍人だ。
 ――多分、行けないと思う。
 けれどそんなこと、こんな顔の雨竜には云えるはずもなくて。
 雨竜は下を向いたまま、一護になにかを差し出した。
 それはライオンのような形をしたぬいぐるみだった。子ども向けアニメに出てくるような、デフォルトされたライオン。
 雨竜は手先が器用で裁縫から機械いじりまでなんでもできるから、きっとこれは雨竜の手作りだ。
 そのライオンは伸ばされた一護の手に乗せられるのではなく、胸元にたたきつけるように渡された。
 驚く一護を、雨竜は下から睨み上げた。
 きつい眼差しながらも、どこか歪んだ表情。
 一護は知っていた。これは、泣くのをぎりぎりでこらえる雨竜の顔だ。
 そんな雨竜に微笑み、一護はもう一度その頭を撫でてやった。
「またな、雨竜」


 それが、彼と交わした最後の言葉。
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